シンプルな美しさ
ピアノ指導という職業柄、様々な演奏を聴く機会があるのですが、たまにハッと心惹かれる演奏に限ってとてもシンプルで美しい事がままあります 。
ピアノ指導をするにあたりアナリーゼ(楽曲分析)という作業は切っても切れないもの。
一つの曲を深く掘り下げ、これでもか!という程細かく分析し細部に渡って作り込んでいくのですが…
そんな作業は全く必要なかったかのようなシンプルで美しい演奏にお目にかかると、『参りました』と頭を下げるしかない羽目になる
しかし実際に何も考えずにシンプルな演奏をすると大抵は薄っぺらい何の魅力もない音楽になるので難しい
では一体これはどうしたら良いのだろうと頭を抱えてしまう!
その答えは『こねくり回してこれ以上ない程やった挙句に、いらないものをすべて削ぎ落とした演奏。それでいて内側から滲み出るエネルギーを感じる演奏』という答えにたどり着く
化粧でいうと一旦 宝塚歌劇団並みの化粧をしてから薄化粧風の状態に持っていくと言う感じでしょうか(笑)
音楽以外の芸術で言うとコンスタンティン・ブランクーシの彫刻やミース・ファン デル ローエの建築のような…
それらはシンプルだけど良く見ると とてつもない量の緻密な計算や、そこに至るまでの気の遠くなるような作業が頭をよぎる そして積み上げられた背景を微塵も感じさせない程一瞬で心を奪われる魅力を合わせ持つ
ただ画家. 彫刻家. 建築家. デザイナーなどの『芸術家』と『演奏家』には大きな違いがありますね
前者はゼロから『1 』を作り出しているという点この違いは大きいかな
クラシック演奏家はそもそも『楽譜』というものがあるので、ゼロから何かを生み出している訳ではないという事は忘れてはならないですね
作曲家に敬意を払いつつ… シンプルな美しさを追求する点においては大いに共通項があると思いながら…
やはり日々精進するしかない!と
部屋の本棚を掃除しながらふと考える日曜日です